ノマドな海外移住計画
歩き続けること
公開日:2018.10.30
/ 最終更新日:
モンゴル

モンゴルで特別な意味を持つ「白」の意味について考える

ウランバートル近くの草原

モンゴル語のアルファベットを「цагаан толгой(ツァガーン トルゴイ/白い頭)」と言います。
ここでいうアルファベットとは、英語の「a b c d…」ではなくモンゴル語の「а б в г…」です。

これがなぜ「白い頭」なのか?

モンゴル留学中にある教授に訪ねたところ、彼は「モンゴルにおいてцагаан(ツァガーン/白)はちょっと特別な色なんだよ」と言っていたのをはっきり覚えています。
具体的には、「尊さ」や「叡智」を暗に意味しているようです。

そこで今回は、この「цагаан(ツァガーン/白)」について具体的に考察してみます。

「白」と言えば何を連想するのか?

ある時、とあるモンゴル人に「モンゴルで『白』と言えば何を思い浮かべるのか?」ということを聞いたことがあります。
その際にあげられたのは以下です。

  • цагаан идээ(白い食べ物=乳製品)
  • сүү(乳)
  • цагаан сахлаа(白い髭)

命の源としての「白」

遊牧民にとっての「白い食べ物」

遊牧民の日々の食事は、大部分が羊などの家畜の肉・内臓によって賄われます。
干し肉を入れたスープや、塩で茹でた内臓、血のソーセージ、大釜で蒸した肉……などです。

そこにびっくりするくらい野菜は添えられません。
使われるとしたら少量の玉ねぎやじゃがいもくらいでしょうか。
実際に私が過ごした遊牧民家庭でも食生活はかなり単調で、使う食材も限られていました。

正直なところ、栄養バランスの面で言えばかなりひどいです。

もちろん、スーパーなどない大草原の中にいるわけですから、当たり前といえば当たり前かもしれません。
畑を作ることもできませんし。

そして、冬になると食生活は一段と厳しくなります。
夏のように家畜を潰すことができなくなるからです。

その際、遊牧民のお腹を満たすのは夏の間に作り蓄えておいた白い食べ物(乳製品)です。
また、乳製品は偏った食生活を続ける遊牧民にとっての貴重な栄養源となるため、大切に扱われていました。

命を育てる「乳」

この辺りはうまく言語化しにくいのですが、モンゴル人と話していると母親を大事にしている感じを受けます。
より厳密に言うなら母親そのものだけではなく、「母の乳を受けることで育ってこられた」ということも大事に考えてる節を見かけます。

遊牧生活において生活の糧となる家畜の仔も、母からの乳を受けて育つのを目の当たりにしてきたからでしょうか。

つまり「白」いものによって「命」を繋ぎ育むことができた、という意識がモンゴル人の意識にあるようです。
ここから「白」に「尊い」という考えが結び付けられていったのでしょう。

知識の源としての「白」

モンゴルでは、幼い頃から目上・年上の人のことを敬うよう躾けられ、普段の生活の中においても、年上の人を大切にする習慣が自然と形成されています。

たとえば、挨拶を交わす際にお互いの両腕を上下に重ねてハグをすることもあるのですが、年齢が上か下かで腕を重ねる順番が異なるなど、習慣の細かな部分にも年上を敬う要素が見受けられるのです。

良い意味での年功序列です。
そして年配の方が長い人生の中で培ってきた知恵をとても大事にします。

つまり、年配の人=白髪が生え髭も白くなった人は素晴らしい知恵を持つ人であるということから、「白」が「知恵」「叡智」を暗に意味するようになりました。

そしてそこから、知恵・知識の土台となる文字(アルファベット)のことを「白い頭」と言うようになったのだと思います。

まとめ:色の捉え方

文化によって「色」の捉え方は異なります。
日本だと「白」と言えば「純白」「汚れていない」というイメージが強いでしょうか。

モンゴルでも「純白」のニュアンスも多少あるようには感じましたが、それよりも上記の「尊さ」「叡智」と言った意味が非常に強く根付いているのを見受けられます。

こうやって色に対する考え方を手繰り寄せていくと、その土地の生活習慣・風習がまた違った方向から発見できるので面白いです。